忙しいとはいいつつも、読書はしてます。
どうも。社会人です。
今回読んだのはコレ。
ロシア人天才学者、ペレルマンによって解決されたポアンカレ予想に絡んで世界の注目を集めている、クレイ数学研究所の出した、懸賞金の付いている数学の7大問題(現在は6大問題)――通称ミレニアム賞問題を取り上げた書籍です。
Amazonではそれなりに評価が高いようですが、あまりにも説明がヘタクソ過ぎると思います。
「高校生に理解できる」がブルーバックスサイドの要求であって、それ故に数学的厳密さに欠ける所が……などといい訳をしているようですが、この説明のヘタクソさは、それ以前の問題です。
全ての章に共通して言えるのが、カッコによる補足の多さです。
それが話をあっちへ脱線させ、こっちへ脱線させ、読んでいる人の頭のなかを引っ掻き回していきます。
かといって、カッコを飛ばして読んでみると、今度はあまりにも薄っぺらな中身で、概要すら掴むことができません。
本来ならば、このカッコの中の情報と、外側の情報とをうまく共存させるのが説明ってモンだと思います。
それが、この書籍ではまったくうまくいっていません。
さらに感じたのが、筆者自身、問題のやそこで使われている数学的概念の意味を理解していないんじゃないか?という疑問です。
例えばポアンカレ予想の項では、ポアンカレ予想が何を言いたいのかの解説については、まるでどこかの参考書を棒読しているような内容で、これでは到底高校生は理解できないでしょうし、もし筆者自身がよく理解しているならば、こんな説明の仕方はしなかったでしょう。(この分野の人ならば、様々な映像資料であるような、もっとうまい例え方をしているでしょう。)
4次元以上のポアンカレ予想に付いての証明も、延々と「こうなります」という事実を並べているだけで、なぜそうなのか?という本質に付いては解説していない点が気になりました。(もっとも、3次元のポアンカレ予想が解決されていない時の話であるから、なぜそうなのか?を解説するのは、非常に骨の折れる仕事だろうとは思う。)
全体的にこんな調子のうえ、物理学の要素が入ってくるヤン=ミルズ理論の話や、ナビエ・ストークス方程式の話などは、その問題の全容をイメージすることができないくらいでした。
(先ごろ読んだ南部博士/小林博士それぞれによる書籍では、難しいながらもゲージ場の様子をイメージできたが、この書籍では何を言っているのかちんぷんかんぷんだった。ナビエ・ストークスについては、大学で長い事触れてきた方程式であるのに、本書の解説からは式の言いたいこと、ミレニアム賞が解決することによって与えられる意味が想像できないほどであった。)
もし筆者が本当はこれらの問題をちゃんと理解しているならば、7大問題の解説のために、この程度のページ数しか与えなかったブルーバックス側の問題でしょう。
本当はもっと疑うべきでした。
なにしろ、7大問題を扱っている(しかも、高校生程度の数学力でわかるように解説したと豪語している)にも係わらず、200ページもない書籍なのです。
これは、単純計算で、ひとつの問題に付いて28ページも無いという事です。
世界の数学者がよってたかって理解しようとしている問題の解説であるにも係わらず、30ページに満たない量の文章で私家解説されていないのです。
これは、もとよりこれらの問題についてある程度知っているなどといった前提知識が無ければ、まず理解することは不可能な文章量でしょう。
(加えて、最初に書いたカッコによる思考の右往左往があるわけですから、理解は更に困難になります。)
更に恐ろしいことに、この少ない解説ページの一部を、本題とは関係のないところに使っている場所が散見されます。
例えば、量子コンピュータを使ってP=NP問題の解決が図られていると一言欠けば済むところを、量子コンピュータを使うとこんなにすごい事が云々……と書いている当たりに、この筆者か元より解説するつもりなどなく、ただ知識をひけらかしたいだけなんじゃないかと疑ってしまった場面もありました。
と、こんな具合に少なくとも私の肌にはまったく合わなかった書籍ですが。
Amazonではそれなりに高い評価を得ているようなので、興味があれば読んでみると良いでしょう。
まがりなりにも、いい本をたくさん出しているブルーバックスによる書籍ですから。
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