8.18.2010

読書

ジーワジーワとけたたましいセミの声が響く季節もそろそろ終りを迎えそうな時節です。
いかがお過ごしですか?どうも。社会人です。

最近本を読めていないなぁと想いつつ、ちょっと興味のあった一冊を読破しました。
読んだのはこちら。




少し前にTHE COVEというイルカの捕殺シーンばかりを強調した映画が公開され、アカデミー賞でもそれなりの評価を得るという事態から、国内でも捕鯨への関心が強まっていると思います。

かねてより書いている通り、私は海好き、海洋生物好きなので、ぜひCOVEも見たいとは思っているのですが、そのまえに国内における捕鯨文化とはどのようなものかを押さえておこうと思い、本書を手に取りました。

本書で扱っているのは、鯨で有名な町、太地の捕鯨活動で、タイトルに出て来るイルカは、鯨類一般を含めたイルカの事です。
太地で捕られる主な鯨類が、ゴンドウと呼ばれる鯨の一種であるため、水族館で見るイルカをイメージしながら本書を読むと、違和感を感じるのかもしれません。

内容は太地での捕鯨体験からスタートして、捕鯨の流れ、捕鯨の歴史、国際的批判への反論、捕鯨に対する筆者の持論などが書かれています。
文章はよく整理されていて、トピックごとに細かくわかれており、電車に乗っている間などのこまぎれの時間でも、効率的に読みすすめることができました。

ただし、文章そのものはあまり上手ではなく、何箇所か読みにくさを感じる部分もありましたので、文章の書き方が好きでない、馴染めない方に取ってみれば、そう言ったところが読みすすめる上でのつまずきになるかもしれません。

さて、内容に対しての感想ですが、捕鯨という文化が日本にあり、捕鯨文化を守るために、今しなければならないのは、南極海の調査捕鯨を継続することではなく、日本近海で行われる沿岸捕鯨文化を守るための活動ではないのか?という意見には、私も賛成です。

また、THE COVEが捕鯨という活動のごく一部、捕殺シーンだけを執拗に集めた映画であり、それは捕鯨活動を世界に伝えることにはならないというメッセージも読み取れました。
筆者が伝えたいのは日本の捕鯨活動全般であって、一部分だけがクローズアップされた、話の種として使われ、捨てられてしまうような安っぽいものではないという気概も感じられました。

ただ、科学者の追い込み漁体験と、科学者であることを書籍のサブタイトルに押し出しているにも係わらず、科学的根拠がある記述は、おそらく一行もありませんでした。(科学っぽい事が根拠になっていると思われる所は何箇所かありましたが、それでも内容に占める割合はごく僅かです。)

特に後半は感情的な文章が散見され、ハクジラ等に多く含まれている水銀の問題や(まるで症状が出ていないから問題ないとでも言いたげな表現には、科学者としての視点が欠けていると思われました)、水族館で飼育されているイルカ類の問題、南極海の調査捕鯨に対する意見など、調べが足りないとか、根拠のない予測(文中で、予測×予測はアテにならないと、ご自身で書いているにも係わらず!)が何箇所も見られたのは残念です。

ただ、捕鯨活動というのがどういう形で行われ、日本にある捕鯨文化がどのようなものか、その概略を知るには十分な内容であろうと思います。
途中に挟まれる、筆者の専門である鯨類の行動学に関したコラムも面白く、雑学として読んでも面白い内容でした。

別にイルカをどうやって喰うと美味いか?を説いた指南書ではなく、捕鯨問題全般を手広く扱った意欲的な書籍であると思います。
捕鯨問題に関心のある方には、ぜひオススメしたいです。

0 件のコメント: