8.05.2010

読書

最近のライトノベル盗作問題から、小説の世界に興味を持ったので、小説家という人がどういう素養の上に成り立つ人七日を知るために、こんな本を読んでみました。

 

小説作法ABCなる書籍ですが、あとがき曰く、ある大学の文学の講義を元に書き起された書籍なんだそうです。
読んでみると、私が思っていたより本格志向の小説、文学と呼ぶべきものに傾いていて、ライトノベル作家の心のあり様とか、作品に対する発想とか、そういう所は読み取ることができませんでした。

代りに、本格小説の端っこを垣間見た感じです。
小説をかきたいと思っている方には、それなりにおすすめできるでしょう。

内容は、筆者の出身からか、ロシア文学やその思想に準ずるものに偏っている感じはしますが、それでも発想の仕方や書くときに気をつけるべき事柄、プロの作家とはなにか?といった哲学的な話、どういったトレーニングを積むべきなのかという実践的な話と、とにかく幅広く扱っています。

本当にこの中に書かれていることができるとしたら、小説としても、十分読むに耐えるものが書けるのだろうなと思わせると共に、文学作法あるいは小説の書き方とでも言いましょうか、言葉で伝承するのが大変難しい分野の事柄であるのに、順序建てて、よく整理された書き方をしていて、このような世界にも或る種の教科書的発想、体系的やり方というのが存在するのだということをよく理解することができました。

それと同時に、何かお話を書きたくなってしまう書籍でもあります。
ブログで小説を書いてみようとか、小説家を目指しているなんていう人はもちろんのこと、人に説明する文章を書かなければいけない人たちにもぜひ読んでほしいです。

というのも、書籍の中で説明と描写の違いに付いて扱った、あまり類のない書籍だからです。
小説では、説明と同時に描写が求められる旨が書かれていて、両者は対極にあるものだと解説されています。
加えて、どのようなものが描写で、どのような物が説明であるかも言及しています。
これを逆手に取れば、描写をすっかり避けて、十分な説明を行うドキュメントを記述する、そんな術を教えてくれる教科書として活用できることでしょう。

引用されている文学や登場する言葉には難しい感じが頻出したり、読み返してもよく意味の理解できないものがありましたが、日頃から小説に慣れ親しんでいる人ならば、難なく読めるのかもしれません。
文体に統一感が無いのは、講義を書き起こして加筆修正したものだからだとは思いますが、ソコにはもう少し気をつかって欲しかったと思います。

中学生にはちょっと難しい内容だと思いますが、高校2年生以上の小説家を志す人にとっては、一種の教科書として活用できる良書だと思います。

当初の目的とは違ってしまいましたが、文学という、これまでほとんど触れたことのない分野の知識を得ることができたので、大変満足しています。

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