1.22.2010

たまには本の話でも。

最近愚痴っぽいことしか書いていない気がするので、たまには本の話でもしましょう。
今日は、つい先ほど読み終えた本の話です。



その名も「数学の学び方・教え方」。
著者は遠山 啓(とおやま ひらく)氏。氏は数学教育の分野では多大な功績を残した偉人で、「いかに数学を、子ども達にわかりよく教えるか?」に生涯を捧げた数学者です。

私が生まれたほんの20年ちょっと前には、すでにこの世におられないので、私は自分が生まれる以前に書かれた本を読んだということになります。

本書を言い表すならば、著者の、生涯をかけた数学教育研究のエッセンスとも言うべき内容で、学び方と題されてこそいるものの、重点は教え方に置かれています。
つまり、ここでいう「学び方」は、「数学の学ばせ方」と読み替えた方が妥当かも知れません。

私は少なくともこの書籍の初刷が出版された10年以上後に生まれていますから、この書籍の内容から学ぶ事はそう多くない、そう思って、実に軽い気持ちで本書を開きました。

けれども、内容はまさに目から鱗。
例えば導入です。もし、手近に高校数学の参考書がある方は、最初のページを開いてみてください。
おそらくそこは、「数とは何たるか?」という話からスタートしているはずです。
そして、多くの方は、数学を習うときに数とはなんたるか?から習っているはずです。

しかし本書は、まずその否定から入ります。
曰く「数とは?の前に、量を学ばなければならない」と。
その後、日本の算数/数学教育の悪を文中で切り捨てながら、ヨーロッパ至上主義を批判し、数学の本質を子ども達に教えるには、どういった教え方が効果的か?を解いています。

何より驚いたのは、現在多くの場所で施されている教育が、目の前の試験を突破するための教育であるのに対して、本書は「どうやって教えると、発展的な考えを養う教育になるか?」にまで言及していることです。

願わくば、こういう内容の算数教育を受けたかったとすら思いますが、今日でもこの内容の大部分が教育に取り入れられていないところを見ると、本書の指摘する「教育の保守的であるが故の悪」は未だに根強く残っているのだなと感じました。

もちろん、本書のやり方が万事正しいとは思いませんが、ナルホドと思う部分、そして「そのように子どもの頃教えてくれればよかったのに!」と思う部分が多々あり、算数や数学を教える立場にある人、あるいは、これから子どもに算数や数学を教えよう、学ばせようという立場にある親御さんに、ぜひ読んで欲しい書籍だと思いました。

文体は、やさしいおじいちゃん先生の語り口とでもいうべき文体で、大変読みやすく、誰にでも親しみやすい文章だと思います。
若干言い回しが難しかったり、「ん?」と首をかしげてしまう箇所も何カ所かありました。
ただ、それを差し引いても大変良い買い物で、人生のよい糧になったと思っています。
しばらくしたら、また読み返そうと思います。

今、アマゾンでは送料無料キャンペーンを実施しているそうなので、この機会に手に入れておくと良いと思いますよ。

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