7.07.2010

読書


私は普段、あまり漫画を読みません。
別に漫画が嫌いなわけじゃなくて、読み始めると時間を忘れて読みふけってしまうので自重しているのです。

そんなわけで、あまり漫画業界のこと、ことさら作家名などを知らない私ですが、こんな私でも名前を知っていて、作品もいくつか読んだことのある漫画家に、手塚治虫がいます。

世間では天才漫画家、漫画家の神様などと呼ばれる同氏。
興味はもっていたものの、これまで詳しく彼のことを書いた、伝記的書籍に出会うことがありませんでした。

そんな中、古本屋(先日の古本でいい本に出会ってから、月に1回ぐらいは古本屋に行くようにしています)で見つけてゲットしたのが、手塚治虫をタイトルにした、ズバリとも思えた本でした。




1990年と古い本で、現代から見ればずっと手塚治虫が生きた時代に近い人が書いた書籍であって、しかも作者自身、手塚治虫のファンだというので、手塚治虫の人生が記録された書籍だと思って買ったのですが、これが大はずれでした。

何がひどいかと言えば、全編を通して「筆者の思い描く手塚治虫像」を読者に強要するのです。
たいした裏付け資料も出さず(裏付け資料が出ているところではあまり強く主張をせず)、手塚治虫はこうでなければいけない、手塚治虫はこう思っていたなどと、筆者が重っていることを、さも手塚治虫自身の意見であるかのように述べている節が随所に見受けられました。

挙句、手塚治虫の心理を分析するような口調で論じ、「どうだい?僕はこんなに手塚治虫のことを理解しているんだぜ」とでも言いたげで、読んでいて気持ちのいい文章ではありませんでした。

手塚治虫の人生に付いても、生まれなど、冒頭こそ文章で語っていたものの、徐々に年表のような簡略化されたものと、それに付随する短い解説文の中でだけ述べられるようになり、終始それと混在させる形で「筆者の思い描く手塚治虫像」を、さも手塚治虫そのものであるかのように書いた文章が目立ちました。

手塚治虫の人生に付いて、その概略を掴むにはいいかもしれませんが、「この筆者の語っている手塚イズムこそ、手塚治虫作品の根底に流れる思想である」とは思わない方が良いでしょう。

真面目に手塚治虫のことを知りたいなら、読むべきでない書籍だと思います。

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