9.26.2010

のんびり算数・・・のつもりが。


読書。
といっても、読むというより、やる。
今回読んだのはこれ。



江戸の数学。和算なる書籍。
今日本では、一部の人に和算がブームで、日本古来の数学をやろうなんて形で、いくつか書籍が出てる。
で、今回は他の書籍に比べて、雑学と実際の問題とが混じってておもしろそうだと思って購入に至った。

内容は中学〜高校程度の幾何学の問題が中心で、江戸では他の文明よろしく、日常で実用になる幾何学が研究の主題だったことがうかがえる。
さらにそこから発展して、パズル的な問題も複数あって、一種のヒマ潰し(そう、本書を手にとった私のように)として、和算が親しまれていたこともわかる。

が、意外に難しい。
中学〜高校程度となめてかかるなかれ。
確かに現在学校で教えている、西洋由来のやり方を取れば、すんなり解ける問題も多くある。
けれども、和算的にやろうとすると、たちまち難しくなる。
のんびりと解くつもりが、中にはガッツリ数学しちゃった問題もあった。

私が和算慣れしていない、幾何学が苦手、数学から離れて久しいというのもあるが、和算の発想は面白いながらも、難しく感じた。
けれども、この難しい問題に取り組む事が、なかなか面白い。
この辺は、数学が好きな人なら分かってもらえると思う。

西洋のやり方と江戸のやり方を比較しながら、シンプルなパズル問題に取り組む。
正直に言うと、私はすべてをクリアすることができなかったし、のんびりという訳にもいかなかったが、今後も機会があればちょこちょこ取り組もうと思う。
(特に後半の問題は難しいのが多いと思った。)

不満な点を挙げれば、和算の考え方に付いて突っ込んだ解説が無いのと、西洋数学の記法と和算の記法が混在していて、大変な違和感を感じる点が大きい。
和算的に書くなら和算的に統一すべきだし、それへの解説として西洋的記法を用いるなら、それは和算側とは別記するべきだったと思う。
この辺の気持悪さに嫌悪感が出なければ、雑学+パズルブックとして楽しめるのではないかと思う。

たぶん、半額ぐらいならもっと売れただろうと思う書籍だった。

9.19.2010

封じて終わり・・・じゃない!

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010091900053
この記事。

 【ワシントン時事】英石油大手BPは18日、史上最悪の原油流出事故をもたらしたメキシコ湾のマコンド海底油井を完全に封鎖したかどうかを確認するため、圧力試験を実施した。結果は19日に判明する見通し。封鎖が確認されれば、4月20日の原油掘削施設爆発に伴い起きた原油流出事故は終結を迎える。(2010/09/19-14:32)


なんて書いてるけど、どう考えたって原油流出事故は、封じ込めて終わりじゃないハズだ。
流出した原油は、まだ海洋に大きなダメージを与えているし、実質的に、分解されて地球の一部に還るまでには、10年単位の時間が必要だろう事は、当初から専門家に指摘されているとおりだ。

それなのに、どうしてこんな記事が書けてしまうんだろうと疑問に思う。

封じておわりじゃない。ここからスタートなんだという意識でなければ、この手の事故はまた何度でも起こるだろうし、何度でも繰り返すだろう。

マスコミは、真実を伝えるにあたって、それを正しく伝えるための言葉を、もっと選ばなければならないと思う。
封じ込めたから株価の下落は止まる。そんなもんじゃないだろうに。

9.16.2010

はやりのミステリを読む。

先日、地下鉄内のモニタでみかけて気になり購入した、江戸川乱歩賞受賞作品、横関大の再会(再会のタイムカプセル)を読んだ。


とても久しぶりによむミステリで、「ηなのに夢のよう」以来のミステリかもしれない。

久しぶりによむミステリだったけれども、久しぶりに読む、ミステリらしいミステリだったと思う。

これから読む方のためにネタバレしないようにするが、気になった点だけ。
・万引き少年の心のケアは?
・圭介の再婚後の家庭は?
・凶器の拳銃は、結局誰が手入れしていたの?隠し持っていた人物に、そんなスキルがあったの?
あたりが、今ぱっと思いつく、気になったポイントだった。

それから、トリックが若干チープかなと思う。
確実性に欠けるというか、偶然が偶然を呼び……と言うような展開があり、ミステリらしい、奇妙な雰囲気を醸しつつも、読み終えたあとの「腑に落ちた感じ」はそれほど強くなかった。

主要な登場人物4人の心情が、代わる代わる描かれていくさまは、「街」や「428」といった、往年の名作サウンドノベルゲームのような感覚もあって、大変面白かった。
この手の演出手法が好きな方なら、確実に楽しめるだろうと思う。

私は、普段は古典的なミステリや売れた(話題になってしばらくたった)ミステリしか読まないので、つまりはそういう熟成されたミステリ作家の作品とついつい比べてしまう形になるが、面白さという点では、それらに遜色ないと思う。

1600円という、ハードカバーならではの高めの値段設定だが、ページをめくりながら、紙の匂いと共にその世界に入っていく、紙媒体書籍ならではの楽しさを、久しぶりに味わった気がする。

そうそう、最後に一言だけ付け加えておくが、仕事が忙しい方にはおすすめしない。
その意味は、是非とも読んで、ご自身で確かめて欲しいと思う。

9.11.2010

読書。

転居してすぐに読書ポストをするとは。。。

今回読んだのはこれ。



なぜ現代に、エクソシストという、ちょっと考えると中世の遺物とも言える職業の需要が高まっているのか?という話を追った、ノンフィクションものです。

文章はとても読みやすく、グイグイと読みすすめることができました。

話の舞台はイタリアはローマ、またバチカンに集中していて、あまりヨーロッパの文化やキリスト教に馴染みのない人だと、?が浮かぶ場面も多々あるのかなと思いました。(幸い、多少馴染みがあるので、私自身が?になることはありませんでしたが。)

現代のエクソシストがどういった活躍をしているのか?
また、オカルトやスピリチュアルといった現代日本で流行しているブームが、ヨーロッパではどのように捉えられている文化なのか?
さらにはサタニズムとはなんなのかといった話にまで話題は広がっていき、教養書として大変楽しめる一冊だと思いました。

この手の話に興味のある方は、ぜひ。

転居完了。

取り急ぎ、引越し完了、ネット開通までこぎつけたのでお知らせしておきます。

8.31.2010

読書

引越し先が決まり、転居も秒読み段階に入りました。
どうも社会人です。

DistroFreakの更新等、滞っていて大変申しわけないデス。
そんな中でも読書はしているので、ポストしておきます。




今回読んだのは、伝承農法を活かす家庭菜園の科学なる書籍。
内容は「伝承農法」に分類される農法が、科学的にどのような効用があって、どうやれば家庭菜園に応用できるのか?といったものが主体です。

科学とはいえ、難しい数式や理論のたぐいは皆無で、「XXによってこういう報告がなされている」といった、科学的/学術的文献に論拠をおきつつも、それ以上は深入りしない、趣味で農業をやる人たちに受け入れられやすい、非常に丁寧な書き方がなされています。

一般にタブーとされている方法を家庭菜園に応用して収獲を増やそうとか(もちろん、実験的な裏付けを示してくれています)、効果的な野菜の保存方法や採種のやり方など、農業の入門書+αとして、大変役に立つ内容だと思います。
「家庭菜園をはじめてみたけれど、思うようにいかない」とか、「普通のハウツー本よりも、もっと全般的に通用する、ごく基本的な知識がほしい」と思っている方におすすめできます。

ただ、残念ながらプランター菜園派の人に取っては、使える内容がそれほど多くなく、本書の内容を自身で吟味しながら応用する必要があります。

家庭菜園をやる上での標準的な教科書として利用する他、伝承農法の意味や、農業で一般にタブーとされている行為がなぜダメで、どうやれば収獲につながる形にできるのか?といった純粋な知的好奇心を満たしてくれるという点でも、優れた書籍です。

文体はやや教科書的ですが、ガチガチの書籍ではなく、研究者の講演会を聞きに行っているような、優しい語り口の、それでいてしっかりした文章で、だれにでも読みやすいものではないかと思います。

家庭菜園をやっていたり、農業に興味があるならおすすめできる一冊です。

8.21.2010

読書。


忙しいとはいいつつも、読書はしてます。
どうも。社会人です。
今回読んだのはコレ。



ロシア人天才学者、ペレルマンによって解決されたポアンカレ予想に絡んで世界の注目を集めている、クレイ数学研究所の出した、懸賞金の付いている数学の7大問題(現在は6大問題)――通称ミレニアム賞問題を取り上げた書籍です。

Amazonではそれなりに評価が高いようですが、あまりにも説明がヘタクソ過ぎると思います。
「高校生に理解できる」がブルーバックスサイドの要求であって、それ故に数学的厳密さに欠ける所が……などといい訳をしているようですが、この説明のヘタクソさは、それ以前の問題です。

全ての章に共通して言えるのが、カッコによる補足の多さです。
それが話をあっちへ脱線させ、こっちへ脱線させ、読んでいる人の頭のなかを引っ掻き回していきます。
かといって、カッコを飛ばして読んでみると、今度はあまりにも薄っぺらな中身で、概要すら掴むことができません。

本来ならば、このカッコの中の情報と、外側の情報とをうまく共存させるのが説明ってモンだと思います。
それが、この書籍ではまったくうまくいっていません。

さらに感じたのが、筆者自身、問題のやそこで使われている数学的概念の意味を理解していないんじゃないか?という疑問です。
例えばポアンカレ予想の項では、ポアンカレ予想が何を言いたいのかの解説については、まるでどこかの参考書を棒読しているような内容で、これでは到底高校生は理解できないでしょうし、もし筆者自身がよく理解しているならば、こんな説明の仕方はしなかったでしょう。(この分野の人ならば、様々な映像資料であるような、もっとうまい例え方をしているでしょう。)

4次元以上のポアンカレ予想に付いての証明も、延々と「こうなります」という事実を並べているだけで、なぜそうなのか?という本質に付いては解説していない点が気になりました。(もっとも、3次元のポアンカレ予想が解決されていない時の話であるから、なぜそうなのか?を解説するのは、非常に骨の折れる仕事だろうとは思う。)

全体的にこんな調子のうえ、物理学の要素が入ってくるヤン=ミルズ理論の話や、ナビエ・ストークス方程式の話などは、その問題の全容をイメージすることができないくらいでした。
(先ごろ読んだ南部博士/小林博士それぞれによる書籍では、難しいながらもゲージ場の様子をイメージできたが、この書籍では何を言っているのかちんぷんかんぷんだった。ナビエ・ストークスについては、大学で長い事触れてきた方程式であるのに、本書の解説からは式の言いたいこと、ミレニアム賞が解決することによって与えられる意味が想像できないほどであった。)

もし筆者が本当はこれらの問題をちゃんと理解しているならば、7大問題の解説のために、この程度のページ数しか与えなかったブルーバックス側の問題でしょう。

本当はもっと疑うべきでした。
なにしろ、7大問題を扱っている(しかも、高校生程度の数学力でわかるように解説したと豪語している)にも係わらず、200ページもない書籍なのです。
これは、単純計算で、ひとつの問題に付いて28ページも無いという事です。

世界の数学者がよってたかって理解しようとしている問題の解説であるにも係わらず、30ページに満たない量の文章で私家解説されていないのです。

これは、もとよりこれらの問題についてある程度知っているなどといった前提知識が無ければ、まず理解することは不可能な文章量でしょう。
(加えて、最初に書いたカッコによる思考の右往左往があるわけですから、理解は更に困難になります。)

更に恐ろしいことに、この少ない解説ページの一部を、本題とは関係のないところに使っている場所が散見されます。
例えば、量子コンピュータを使ってP=NP問題の解決が図られていると一言欠けば済むところを、量子コンピュータを使うとこんなにすごい事が云々……と書いている当たりに、この筆者か元より解説するつもりなどなく、ただ知識をひけらかしたいだけなんじゃないかと疑ってしまった場面もありました。

と、こんな具合に少なくとも私の肌にはまったく合わなかった書籍ですが。
Amazonではそれなりに高い評価を得ているようなので、興味があれば読んでみると良いでしょう。
まがりなりにも、いい本をたくさん出しているブルーバックスによる書籍ですから。