2.11.2012

読書。

今月二冊目にして、罪と罰3。完結。



言葉にしづらい「面白さ」「興味深さ」が全面ににじみ出た小説だった。
特に哲学、キリスト教、犯罪心理学、政治思想といった分野のバックグラウンドがあると、十二分に楽しめる小説だと思う。

終わり方はあまり歯切れの良いものではないのが残念だと思ったが、ドロっとした人間の心の愚かさを扱いながらも、物語前編を受難〜復活へのキリストの生涯に当てはめてのストーリー構成は、非常に読み応えのあるものだった。

純粋な悪との対比、悪にすら乗り越えられた執着心を乗り越えられない事への怒り、また、最後まで自分自身の思想・理念を信じようとする心理、こういったところが事細かに描画されていて、文章訳の独特さにさえ慣れればズンズン読み進めることのできる一冊だと思う。

最後まで贖われる事の無い罪と、最後までのしかかる事の無い罰、そしてキリストを受け入れる事で泥の沼地から引き上げられる様、泥だらけのままでもキリストは愛してくれるという思想、純粋な獣たる人の欲を、これでもかと言わんばかりに物語の中に押し込めていて、先を読まなければ眠れないほどにハマってしまった。

奇しくも昨今、思想の欠如が叫ばれて久しいように思うが、生まれてくる思想の良し悪しは別にして、人の思想とはどうやって生まれてくるかについて、著者なりの考察をまとめた書籍として読むこともでき、大変興味深いと感じた。

個性豊かなキャラクターたちの立ち位置も柔軟に変化し、軸足を外さない主人公を中心に、織物のように編み込まれているストーリーは、長編小説として読み継がれるだけのものであると思った。

物語を楽しむためには、先に述べたようなバックグラウンドが必要であると思うし、むしろそういった背景の欠片でも持っていないならば退屈で理解しがたい小説になってしまうだろうと思うが、歯ごたえのある小説を求めているなら、僕からのオススメとして、自信を持って紹介できる三冊だと思う。

たまには古典でもとも思ったけれども、古典の面白さに病みつきになりそうな感じ。

0 件のコメント: